2016年12月11日 更新

お薬手帳を「紙」と「アプリ」で比較してみた

「おくすり手帳」というと、思いつかれるのはA6サイズの薄い手帳のイメージではないでしょうか。このお薬手帳に薬局の薬剤師が、過去の処方された薬の履歴やアレルギーの有無、これまであった副作用の事象などを目視で確認して、お薬による健康被害のリスクを考慮した薬の処方してくれます。 私たちの日常生活においてはあまり気がつくことがありませんが、近年はこのお薬手帳周辺の法律や運用方法が様々に改定されています。その中でも大きな変更点は、お薬手帳としてスマートフォンのアプリなど「電子版」について、幾つかの条件を満たせば紙のお薬手帳と同様にみなす、というものがあります。これにより、薬剤師会や調剤薬局チェーン、ヘルスケアソリューションを提供する様々の会社からお薬手帳の電子版が登場しています。 まだまだ認知度としては低い、電子版お薬手帳。今回はその初歩的な知識をご紹介します。

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スマホアプリのお薬手帳で「忘れた!」をナシに

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ある意識調査では、「薬局へ行く際は、お薬手帳を常に持参している」の割合は約30%。お薬手帳を知らない、という人も約10%が存在し、未だ「お薬手帳」を活用できているという人は少数であることが現実です。
また年代別に見ると、若い世代ほどこのお薬手帳の活用率は低い傾向にあります。もちろん、高齢の方ほど医療機関へかかる可能性が高く、必然的にお薬手帳の利用率や活用率は上がるのは十分理解できる部分ではありますが、お薬手帳は病気の時にだけ利用すればいいものではありません。日常生活の中で携帯してこそ、その価値が発揮されるシーンがあるのです。
このように携帯することが前提といってもよいお薬手帳ですが、紙の手帳ではいくら小型とはいえやはりかさばったり面倒くさいと感じてしまうことが多いのが現状です。
かたや私たちのライフスタイルにおいて最も手放さないものの一つがスマホです。この「常に携帯しておいたほうがよい、でもそれも煩わしい」という方にピッタリなのが、お薬手帳の電子版です。急な体調不良や、自分自身で体の状態を説明するのが難しいときなど、「こんな時こそお薬手帳があればいいのに!」というシーンで後悔しないように、アプリのお薬手帳を一つインストールしておくことは多大な努力も労力も必要ない、手軽な体調管理の手段としてとても優れていると考えます。
また、アプリならではのメリットもあります。
例えば、薬を飲む時間になったらアラームでお知らせしてくれる服用アラームの機能を使えば、忙しさにかまけた飲み忘れを防止することもできます。
また、アプリによっては1つのアプリで家族などの複数人のお薬手帳の役割を兼ねることができるものもあります。この機能を使えば、自分の子供や配偶者、場合によっては離れて暮らす自分の親などの薬の管理を手元のアプリで行うこともできるでしょう。
スマホに入れておけば、スマホを持つ=お薬手帳を持つ、ということになります。「お薬手帳を忘れる→新しく発行する」を繰り返した結果、医療機関ごとにお薬手帳ができてしまうというのは、度々耳にする「あるある」です。その結果、さらに1冊にまとめる手間も発生し、結果としてお薬手帳を使わないというのでは本末転倒です。

でもやっぱり紙のお薬手帳の良さもあります

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アプリ版お薬手帳のメリットは頭では理解しても、「とはいっても紙のほうがいい!」という意見も多数あります。
まず、紙のお薬手帳の最大の利点は、「誰でも使える」ということでしょう。患者側の立場で考えると、スマホのお薬手帳を使いこなすにはやはりある程度のスマホの操作や仕組みに対して習熟が必要です。「使おうと思った時に使えない」というのはでは、お薬手帳として失格です。その点、紙のお薬手帳であれば、ページを捲るだけで服用履歴が確認でき、一度に見ることのできる情報もスマホに比べれば多く視認性にも優れています。
また医療従事者側からした場合、スマホのロックがかかった状態ではアプリを立ち上げることができない、つまりお薬手帳をイザという時に中を見ることができないというケースが考えられます。
手元に情報があるのに、それを参照することができなくてはこれもまたお薬手帳としてはデメリットです。
他にもバッテリー切れなど、電子版お薬手帳がスマホの状態に依存する点では、紙のお薬手帳であれば単独の機能として切り出して、誰でもシンプルに利用することが可能です。
また、紙のお薬手帳であれば、日本全国どこの調剤薬局でも等しく利用できるというのもポイントです。実はアプリのお薬手帳は、「そのアプリに対応した薬局でないと最大活用できない」という弱点があります。どんなにアプリが優れていても、自分のかかりつけ薬局で利用できなければ意味が有りません。この点は、現在薬剤師会、アプリの開発メーカーなどが協力して今後の課題解消へ向けて動いているところですが、現状では完全に解消されたという状況ではありません。
「利用者や利用場所を選ばない」という点で、紙のお薬手帳の使い勝手の良さは、まだまだ電子版お薬手帳の及ばないところでしょう。

それでも電子版お薬手帳を使う理由

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現状では色々な制約条件のある電子版お薬手帳ですが、それでも紙のお薬手帳と比較した場合には、紙のお薬手帳では実現不可能な大きな優位点があります。

まず、「お薬手帳のバックアップ」です。紙のお薬手帳は紛失や消失した場合に、元の情報を復元することは非常に困難です。せっかくの服薬履歴情報を失うことになります。もちろん定期的にコピーをとっておくなどすれば別ですが、そのような管理をされている方は稀でしょう。
その点、アプリであれば、お薬手帳アプリ自身のデータ管理によって自動的にクラウドサーバへ保存されていたり、自身でもスマホのバックアップを行うことでデータの退避を行うことができます。そしていざとなれば、そのバックアップを使うことで、バックアップ取得時点のデータを完全に復元可能です。データ消失リスクは、電子版お薬手帳のほうが低いと言えるでしょう。
また、紙のお薬手帳は、上記にあげた「誰でも見られる」メリットの裏返しで、落とした場合などに「情報漏えいのリスク」は圧倒的に高いということになります。
お薬手帳にある情報は、個人情報であるとともに「機微情報(センシティブ情報)」という扱いになります。機微情報とは「(情報漏えいによって)社会的差別を受けうる情報」と規定されているもので、医療情報もこの情報に該当します。お薬手帳にある薬の服用履歴情報は、その薬の名前を見ることである程度病気の名前や重症度を推測することが可能な情報であり、もし悪意があるものが利用した場合、故意に副作用を起こすといったことも可能性です。
そのような情報を、紙のお薬手帳であれば、誰でもパラパラめくることで容易に閲覧できてしまうという点で情報管理の面では大きなリスク要因となります。電子版であれば、パスワードなどの認証機能を有するものであれば、そのリスクを大きく減らすことが可能です。
また、「お薬手帳情報の共有が簡単にできる」ということも、紙のお薬手帳ではできない電子版お薬手帳のメリットです。
例えば、アプリのお薬手帳の中には「(対応薬局であれば)お薬の情報が自動的にアプリに登録される」という機能をもつものもあります。所定の手続きは必要ですが、この機能を利用すれば自分の親が遠方に住んでいるときに、親が薬局に行くたびに自分の手元のアプリにその時に処方された薬の情報がデータとして全て自動的に入ってくるといったことが可能になります。
万が一、親が急病で倒れた場合など、お薬手帳を探す必要はなく、自分のスマホの中にある情報を使ってその後の対応が迅速に行えることも考えらます。

その他、電子版お薬手帳であればデータ化された情報の検索性が高いなどの点もメリットになると思われます。

お薬手帳の電子化による今後の医療

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お薬手帳の電子化を含め、様々な医療のIT化が進んでいます。これらは政府が掲げている「どこでもMY病院」という構想の実現を目指しています。この政策は簡単に言うと医療関係者だけが閲覧できた情報を、患者さん自らが管理し有効活用することを目指しています。
これが実現すれば、自分の過去の医療・健康に関するデータを自分で管理し、自分の意志で医療機関に提示することで、より自分に合った医療サービスを受けられるようになります。「医療サービスのパーソナライズ化」と呼ばれているこれらの施策実現の中には、お薬手帳も大きな役割を果たすのではないでしょうか。
患者と医療従事者とのコミュニケーションツールとして見た場合、まだまだ電子版お薬手帳は機能的にも使い勝手の面でも発展途上であるのは否めません。
しかしながら、お薬手帳自体の役割や位置づけも現代にあわせて少し変わってきているとも思えます。今後の電子版お薬手帳の進化が、お薬手帳の新しい価値を生むと期待しています。

それぞれのよい点を理解した上で選択しよう

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紙のお薬手帳も電子版お薬手帳も、それぞれにメリット・デメリットがあり、現実的には、今後しばらくは併用されていくでしょう。
ただ、大きな流れとしては、電子版お薬手帳の進化に合わせて、電子化の流れになるのは間違いないと考えます。お薬手帳を取り巻く現状の理解と今後の進む方向を見ながら、その時の自分にあったものを選択できるようにしましょう。
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