2016年11月29日 更新

薬剤師の皆さんの熱い想い!お薬手帳の誕生秘話

お薬手帳をご存知でしょうか。認知度が上がってきたとは言え、普段病院にいかない人にとってはまだ馴染みがないものかもしれません。このお薬手帳、誕生するまでの経緯を知っている人はほとんどいないでしょう。実は、投薬ミスと大震災をきっかけにして、薬剤師達の並々ならぬ熱意によって誕生したのです。

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投薬ミスと震災の混乱がきっかけだった

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病気になった時に、正しく薬を服用すれば病状の回復に効果がありますが、複数の薬を飲んでしまうと、組み合わせによっては効果が弱まってしまうばかりか、副作用により重大な健康被害を引き起こすことがあります。
お薬手帳とは、そんな薬の飲み合わせによる健康被害を防ぐために、患者が服用している薬の情報を一冊にまとめて管理することを目的として作られたものです。
お薬手帳が作られるきっかけとなったのが、薬の飲み合わせによる副作用で多くの被害者を出した「ソリブジン事件」です。抗がん剤を投与しているがん患者に帯状疱疹の症状が出たため、治療薬としてソリブジンを服用させた結果、薬の副作用で骨髄障害を引き起こしてしまったのです。
当時は、患者にがんの告知をすることはあまり一般的なことではなかったので、闘病中の患者自身もご家族もどんな薬が投与されているか知らされていないことも珍しくありませんでした。そのため、他の診療所で帯状疱疹の治療を受ける際に、本来なら投与してはならないソリブジンが処方されてしまい、死者や重病者を出すという結果を招いてしまいました。経験豊富な医師ですら抗がん剤使用の有無を判断するのは困難なのです。
このような薬の副作用による医療事故を未然に防ぐ目的で、一部の医療機関では患者の服用している薬を手帳に書き込んで情報共有が行われ始めました。これがお薬手帳の原型です。
患者の服用している薬の情報の重要性を、より一層痛感させたのは、阪神淡路大震災でした。震災の影響で、現地の診療所や病院の機能が麻痺する中で、遠方から支援に来た医療従事者が、患者に服用薬を聞いたところ、自分の服用薬について詳細な情報を答えられる人はほとんどいなかったのです。
そこで、服用薬の情報を記録する「お薬手帳」作ることに尽力したのが、埼玉の朝霞地区薬剤師会の薬剤師たちでした。

おくすり手帳には、薬剤師たちの思いがつまっている

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正式名称にひらがなの「くすり」という文字を採用したのは、「小学校低学年の子供でも、何のための手帳かを知って欲しい」という思いを手帳から感じてもらうためです。また、お薬手帳を作るときに、「携帯しやすいこと」「情報を一冊にまとめて最新情報を把握しやすくすること」の2点が重要とされました。さらに、患者の協力を得て、サイズ・記載すべき情報・文字の大きさなどを調査して、試行錯誤を繰り返した末に、完成したのが初期のお薬手帳です。
記載する内容は、処方された薬の名称、分量、服用回数・方法、処方された日付に決まりました。当初は、手書きで書き込むものだったため、記載ミスの防止と類似した名称の薬を混同しないように、薬の包装を直接貼ることができる工夫がされていました。
また、氏名、性別、生年月日、血液型、住所、電話番号、緊急連絡先などの基本情報に加え、過去の副作用履歴、アレルギーの有無なども、記載できるようにすることで、救急隊が、適切な処置を施せるような配慮もしてあります。
さらに、当時は個人情報保護に対する意識が高まり始めていたタイミングだったため、救急隊が緊急時に躊躇せず情報を閲覧できるように、「緊急時救急閲覧可」という表記を入れるという配慮をしました。医療従事者という立場でも、医師と薬剤師、訪問看護師、コ・メディカルと呼ばれるリハビリを専門に扱う人同士が、直接会って話す機会というのは実はあまりありません。
そのため、お薬手帳を通じて患者さまの情報共有を行い、患者を守りたいという薬剤師達の思いが「おくすり手帳」には詰まっているのです。

お薬手帳はセルフメディケーションのツールです

このように、お薬手帳は、薬の副作用による健康被害から患者を守りたいという薬剤師達の強い思いから誕生しました。
まだまだ一般的には「面倒くさい」「知らない」「不要」などという意見も多くみられるのも事実ですが、自分を守る「セルフメディケーション」のツールとして、この機会に改めて薬剤師の皆さんの想いを見つめ直してみてはいかがでしょうか。
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